チェンソーマンではしばしば、窓際の構図が見受けられます。
そして、それは非常に儚く情緒的な演出となっています。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
今回はその構図について、写真撮影の知識をベースに解説していきたいと思います。
なぜ窓際の構図は美しいのか
美しいの捉え方は人それぞれだと思いますので、この記事では「情緒的な美しさ」という観点から解説していきたいと思います。
まず最初に、「根本的に写真とはなんぞや」というところから始まるのですが、ざっくりいうと写真というのは光を撮っているんですね。
窓際に立つ人物の構図、というものは光源(光の発生源)が定められていて、コントラストを強調しやすいのです。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
コントラストというのは、ざっくりいうと「明るさと暗さの差」という意味です。
このコントラストを巧みに使うことで、情緒的な演出を可能としています。
情緒的な写真(構図)とはなにか
情緒的というのは、感動的という意味も含まれています。心を動かす構図です。
構図一枚で心を動かしているわけではなく、その構図の光の入り方や人物の姿勢などでその写真(コマ)の裏に流れるバックグラウンドを無意識に感じているわけです。
そして観る人に考える時間的猶予または空白を残しており、このようなシーンではあえてセリフも音も描写されていません。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
チェンソーマンは特に展開や静動が激しく、まさにジェットコースターのようなスピード感の中で、突然溜めを作られると、途端に情報の波が押し寄せ読者の感情をさらっていきます。
またその溜めが最大になるように、観る人の目を奪うように特に情熱を込めて細部まで描写されています。
良い意味でのリアリティがあり、台詞などはなくとも登場人物がそこに存在しているのだと主張してきます。あくまで美しい一枚絵ですがメインは登場人物の心境にスポットが当たっていることが分かります。
光の当て方
先ほど記述したコントラストに関係する技術ですが、構図全体で光のコントラストを強調する際に、登場人物の輪郭に光を少しだけ描写することにより、より情緒的なイメージを見ている人に与えます。
これは漫画のみだけでなく、写真にも用いられている技術です。
またコントラストを強調することにより、重くて硬い印象を出すこともできますし、光源の出力を弱くしコントラストを弱めることで柔らかさを出すことも可能です。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
さらに、その際登場人物は逆光(光がカメラに向かってくる)ため、表情に影ができます。これは心情描写を暗くするのではなく分かりにくくすることができます。また逆光での撮影は美しさを演出できます。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
分かりにくい、というのは空白であり余地ですので観る人に100%の情報量を与えるのではなく、観る人が提示された情報から補完することができます。
表情は見えなければ見えないほど良いというわけではありませんが、人間は言葉よりも非言語コミュニケーション(いわゆるボディランゲージ)からの情報伝達が9割近く読み取る情報量とされていますので、
表情や台詞からだけでなく、ポーズや行動から情報を保管し、その思考する時間が感動(エモーション)に繋がってくるわけです。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
また、補足ですが窓はサッシがあることで、写真が平行となり構図が綺麗に収まるという利点があります。
平行写真は超王道の構図であり、見る人の心に素直に伝えることができ、なおかつ無駄な情報を与えずスッキリと整理された印象を与えます。
まとめ
チェンソーマンの作風は特に言葉は最低限に留め、描写で語ることが多いです。その描写で語る際の読者のスピードに溜めを作る役割を担っています。
またそのためには、目が滑るのまではなく止まるものである必要があり、
特に窓際の構図はコントラストと光の加減の演出を行うのには最適であり、情緒的な描写となって読者に余白を与え、心の動きだけをハッキリと感じさせるように作られているのだと思います。
チェンソーマンはコマとコマの繋がりや視線誘導、さらにコマ内での時間経過などかなりの拘りがありますが、こういった情緒的な描写は撮影で用いられる技術で描写されているなと感じました。
まとめます
・窓際の構図はコントラストを強調しやすい
・コントラストを調節して情緒的な演出に
・逆光の構図は美しさを感じる
・細部まで書き込むことで読者の目に留まる
・セリフなどを削ることで読者に想像される余白を与える
・一枚絵の中にバックグラウンドが流れている
他にも様々な技術が盛り込まれていると思います!
読んでくださってありがとうございました!
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