描写で語るシーンが多いチェンソーマンの視線誘導について、師匠とのバトルを題材に考察・解説していきたいと思います。
また今回の記事は、分かりやすくするために実際に視線誘導の解説画像も作成しました。
こんな感じです↓ あとから解説付きで紹介します。
それでは最初に、漫画における視線誘導の基礎知識だけ簡単に説明します。
漫画における視線誘導とは(基本編)
視線誘導とは、
読者がスムーズに状況を把握し、気持ちよく読むための漫画執筆における技術の一つです。
その中でも重要なポイントを二つ紹介します。
① ページは
右上から左下に流れる
漫画は
右上から始まり、左下で終わります。これが漫画の1Pです。
この流れが基本的なベースとして存在しています。
② 一コマ内は
同じ時間ではない
漫画の一コマは写真のような止まった描写ではなく、動画に近いです。
一つのコマ内でも右から左に沿って時間が流れていきます。
視線誘導基礎知識
まとめ
①右上から左下に流れる。
②一コマは同じ時間ではない。
上記の二点を軸に、
実際に師匠とのバトルを振り返りながらチェンソーマンの視線誘導について解説していきたいと思います。
シーン①
師匠に飛びかかるデンジ
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
まずはこのシーンから解説していきましょう。
デンジが師匠にチェーンを巻き付け、飛びかかるシーンです。
このページの視線誘導は、下図のようになります。
ポイント解説
上記で説明した通り、まずが右上から視線がスタートします。
その次にセリフに沿うように視線が動きますが、ここはあえてセリフを分裂することによりデンジを囲うようにして流れます。
チェーンの使い方
人物や物、または吹き出しに沿って視線は動きますが、
ここで注目したいポイントはチェーンの使い方です。
チェンソーの刃(デンジの腕)からチェーンに誘導を繋げることで、自然に視線の流れが構築されています。今回の話ではかなりの部分でチェーンによる視線誘導が巧みに使われています。
デンジがページ内を動き回る
ポイント③〜⑤にかけては、ページ内でのデンジの動きを表しています。
右下にデンジと吹き出しを配置することにより、セリフを読む時間というタメが発生します。そして左上にデンジを配置することにより、大きくジャンプをしたことを視線誘導を使ってスムーズに表現し、ページ内をデンジが動き回ります。
シーン②
師匠が力強く壁に叩きつける
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
次に師匠がデンジを壁に押し付けるシーンです。
非常に強い力で押し付けられていることを感じます。
なぜこのシーンに重量感を感じるのか解説します。
ポイント解説
このページの見所は、一番下のコマの師匠がデンジを壁に叩きつけるシーンです。
セリフ回しで遅延させる
まず、一番上のコマで今度はデンジのセリフを散らして、視線をジグザグに動かし時間を経過させます。
さらにここのコマ、右上の師匠の腕が視線誘導で繋がっていますね。すごい⋯
そしてデンジのセリフの中に「⋯」を使用することにより、さらに時間の経過を遅くさせます。
この流れを事前に作ることで、ページ全体の動きを重厚なものにします。
師匠の攻撃の重さ
そして師匠の攻撃になります。
非常に重い一撃です。
この攻撃は左から右に行われています。
重い攻撃という表現を行うために、事前に大きなタメを作るための仕込みをします。
漫画は一つのコマの中でも右から左に時間が動きます。
ここではそれをページ全体を使って表現しています。
中段、セリフを右端に配置することにより、視線を右端に固定。そこから一直線に絵だけで視線を誘導し、左端へ。
左端のコマで今度は右に向かって大きく腕を振りかぶる描写を差し込みます。
その後、右斜下に視線を誘導し一気に右下まで運ぶことで非常にダイナミックで重い攻撃が表現されています。
また、師匠の頭と腕、チェンソーで大きな塊を作ることでより巨大な動作になっています。
シーン③
決め台詞から見開きへ
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
見開きへの仕込みのコマです。しかし仕込みだけで終わらせず、デンジの決め台詞を入れることで力強さを感じるページに仕上がっています。
ポイント解説
このページの見所は、デンジくんの力強さと次のページにある見開きへの布石です。
見開きへ最大のタメ
デンジが会心の一撃を与える見開き前のページです。
ここではデンジの力強い決意と動機を大きな文字で表現することにより、一気にデンジに力をこめます。
さらに下の師匠は右下へ引っ張られています。
次の見開きページは右から左へと大きく動く爽快感抜群のページですので、その助走距離を最大まで稼ぐために師匠を右下へ引っ張ります。
ここでチェーンだけコマの外まではみ出ていることに強い拘りを感じます。
また、先ほど記載した通り視線誘導のセオリーは右上から左下なんですが、今回の場合は見開きのためにあえてセオリーを無視して右下に視線を誘導させています。
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
そして見開きへと続きます。
師匠を右下の端っこまで引っ張ったあと、見開きのデンジは右下から飛んできます。
見応えと勢いのある一撃です。
シーン④
上から車を押し付ける
(引用: チェンソーマン/藤本タツキ 出版/集英社)
ポイント解説
このシーンはコベニカーを使用した最後の一撃です。
先ほどの見開きから息継ぐ暇を与えず怒涛の攻撃を繰り出します。
怒涛の連続攻撃
見開きの次のページとなります。
先ほどの見開きが右下から左上に視線が大きく誘導されたあと、今度は右上から下に叩きつけるようにコマが動いていきます。
また右下の吹き出しに「⋯!」を作ることでタメを発生させ、そこからページ最上部までデンジをジャンプさせます。
ページの中をこれでもかというくらい大きくデンジが動き回り、
デンジ→車→師匠というシンプルで分かりやすい構図を展開。
また下の部分に師匠の体制を崩して線を固めることで車の重量感で押し潰されている感じが表現されています。
まとめ
今回は初めてチェンソーマンという作品における視線誘導について解説しました。また作品の中でも特にセリフが少ないバトル回だったので、視線誘導や演出の技術がギュッと押し込まれていました。
特に注目したいポイントは、チェーンの使い方とページ内におけるダイナミックなコマ割りという点です。
細かくチェーンの描写を見てみると、最大限にまで活用していることがわかりました。また体が大きな師匠に対して画面いっぱいにデンジが動き回るように感じるテクニックが素晴らしかった回となりました。
この記事を作成した筆者は漫画をきっちりと描いた経験がないため、まだまだたくさん気づかないようなテクニックや演出がチェンソーマンという作品には仕込まれていると思います。そういった意識しないと見つからないような技術を探すのも漫画を読む楽しみの一つだと今回の記事を作成して思いました。
読んでくださってありがとうございました!!
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